てんしき杯 その3 決勝 in じゅうろくプラザ

さて、決勝戦。

第一試合は
酒乱苦 雑派 (法政大学) 野ざらし

霜月亭 雪走 (成城大学) 五人廻し

4対3で雪走さんの勝ち。

これ、私コメント求められてたんですけど、
正直困った。。。巧者同士の組み合わせ。
たぶん、声出して笑った回数なら雑派さんの方が多かったと思うのですが、
にやにやさせてもらった深みは雪走さんだった。のかな。
雪走さんの悪女はすでに定評のあるところですが、
それだけでなく、男性キャラのバラエティもちゃんと楽しめた。
そこで、かろうじて、雪走さん。
ただね、雑派さんはぜひ、他のネタ、聞きたいな。
粋な感じがしそうです。
雪走さんは去年今年と何度か聞かせてもらって、感心ばっかりしてますね、そういえば。 

第二試合
松田久 海戯昇 (大阪大学)  転宅

駿河亭 惡團治 (明治大学)  元犬

5対2で惡團治さんの勝ち。

海戯昇さん、ちょっと声とマイクとの相性が悪かったかも。
女子の宿命、いかに聞きやすい声を作るか。難しいところです。
空間が変わると、それも変わるし。
噺は上手でしたし、キャラ立っていたんだけども。。。

惡團治さん。ものすごく作り込んでる、でも「ウェルメイド」な味わい。
個人的には大好きですよ、こういうの。学生さんがあえてやってくるところが。
攻めてるんだけど、とがりを全く感じさせなくて、「引き」ができるタイプってところかな。

私が審査に加わっていたのは、ここまで。
正直、ものすごくほっとしました。
ほんと、ただの客で聞きたかった……。

さてさて、他の組み合わせのレポも。

第三試合
四笑亭 笑音 (関西学院大学) ちりとてちん

富士見亭 萬藤 (法政大学)  クソ長屋

4対3で笑音さんの勝ち。
これ、自分が審査にはいってなくて良かったわぁ。。。
全然違うタイプ。比べてはいけないくらい、違う。
学生落語、てんしき杯、というあの場なら、萬藤さんていうのも、ありだったかな。。。
ただ、こういうのは、学生さんは良いけれど、一般のお客様からは、
「全然分からない」「ただただ下品」ていう反応もたぶん、あったと思う。
そこを、どう審査員は判断すればいいのか。
笑音さん、きっちり巧かったからかろうじて勝ち。というところでしょう。

第四試合
永福亭 灰松 (東京大学)    饅頭怖い

ながら家 千兵衛 (岐阜大学)  死神

1対6で千兵衛さんの勝ち。
これは。。。灰松さん気の毒だった。。。。
噺の展開の工夫も技術も、すごくすごくすごく見事だったのだけど、
それを上回る千兵衛さんの意外性に、審査員がみんな気持ちを持ってかれました。。
こういうことが起きるから、てんしき杯は怖くて、面白い。
マクラでふったことが、実は「どこからどこまで噺の一部なのか」が、終わるまで分からない作り。
小説家としても、思わず羨望のまなざしで仰いじゃう、千兵衛さんの才能。
このあとも快進撃だったのよね。。。

準決勝第一試合
駿河亭 惡團治(明治大学)  延陽伯

霜月亭 雪走 (成城大学)  野ざらし

5対4で惡團治さんの勝ち。
あえてここで野ざらしをやるという雪走さんの意気。お見事。
ただ、雪走さんはすでにこの世界で知られているだけに、審査員が
期待したものとは、ちょっとちがっちゃったかも、というのと、
惡團治さんのよく考えられたスタイルが、客を飽きさせないことにおいて、
ほんのちょっとだけ、頭出ていたように思います。
もし、ここで雪走さんが紙入れをやっていたら、さらに審査員は頭を抱えたかもしれません。

準決勝第二試合
四笑亭 笑音 (関西学院大学) 火焔太鼓

ながら家 千兵衛 (岐阜大学) 元元犬

8対1で千兵衛さんの勝ち。
元元犬。誤植ではありません、元元犬。
こう来たか! と審査員が唸るのが分かるような展開。
笑音さんはきっちりやっていたけど、このあたりで、もう千兵衛さんが、
審査員と一般客、全部を味方にする空気をまとっていたなぁ。。。。

三位決定戦
霜月亭 雪走 (成城大学)    紙入れ

四笑亭 笑音 (関西学院大学) つる

5対4で雪走さんの勝ち。
紙入れとか、雪走さん、イイのよね。
この組み合わせは、「王道感」のある戦い。
キャラが立った分、雪走さんに分があったかな。

優勝戦
駿河亭 惡團治 (明治大学)  狸の化寺

ながら家 千兵衛 (岐阜大学) 孝行糖

3対6で千兵衛さんの勝ち。

なんというか、こういう言い方、語弊があるかもしれませんが、
ものすごく下克上感のある組み合わせだった。。。。

惡團治さんが見台出してきたとき、「お! やるな!」って。
あえてここで、上方のきほんのき、「旅」を披露するとは。
感動しましたね、その試み。
きれいな、きれいな、高座でしたよ。。本当に。

私はここで、バレエ漫画の「SWAN」で、
黒鳥の32回グランフェッテを全部ドゥーブルでやってきたラリサと、
あえて一度もドゥーブルしないできっちりやり通した真澄との戦いをイメージしてしまったのでした……。

ただね、千兵衛さんのミラクルはドゥーブルどころではなかったのだな。
彼の工夫は斬新だけど、私のようなおばさんにもじゅうぶん伝わる、
ぎりぎりを狙って見事だった気がします。ああ、ここでAKBなのね、とか。

と、いうわけで。
長い長い二日間。参加した学生さんたちにとっては、二日どころではない、長い戦いだったことと思います。
この体験、きっと、今後の社会人生活に生きると思います。

終了後、あとのプロの会が始まるまで、駅ビルの飲食店で時間を調整しておりましたら、
惡團治さんと灰松さんが、私の姿を見つけてわざわざあいさつに来てくれました。
洋服姿のかれらは、とてもとても美しい(いろんな意味で)好青年。

きっと悔しくて仕方なかったことと思います、こちらもかける言葉が見つからなかったのだけど、
きっと彼らには、素晴らしい未来があるだろう、ぜひあるように、と
祈らずにはいられない、審査員のおばさんでございました。
てんしき杯の杯
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テーマ : 歴史小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

おくやまけふこ

Author:おくやまけふこ
愛知県生。小説家。
名古屋大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。
大学教員などを経て、2007年、第87回オール讀物新人賞受賞を機に作家デビュー(受賞作は『源平六花撰』に所収の「平家蟹異聞」)。
名古屋市在住。
家族は夫と猫二匹。

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