(たぶん)若くなかった、若さま。

若との出会いは、2011年の十月。
広小路通りの、今はもうなくなっちゃった、前の丸善ビルの脇に、
うずくまっていたくちゃくちゃなもこもこに、魅入られてしまったのでした。
くちゃくちゃなもこもこは、すぐに純白の若さまになりました。
でもね、若の足は、完治はしなかったのよね。
複雑に折れていて、あるときは獣医さんから「切断も視野に入れておいて」
と言われ、乳母やは帰り道で泣きました……。
幸い、とってもゆっくりだったけど、切断はしなくてもだいじょうぶなほどに、
骨は回復して、元気になってくれた若。
ただ、その頃からすでに、腎臓も危険値だったのでした。
たぶん、どこかのご年配の猫好きの方に、大切に飼われていて、
何らかの事情で、そこにいられなくなったのでは、と我が家では推測しています。
我が家はきっと、隠居所として選んでもらえたのでしょう。
「姫」や「若」は通称で、別に「実名」があります。
姫たちの実名は、なにぶん姫ですので明かしておりませんが。
若の実名は「五郎太」さまと申し上げました。
尾張藩の由緒ただしいお世継ぎのご幼名を、いただいたのです。
乳母やがその頃からどうしても、尾張のお殿様のお話を書きたいと思っていたのと、
名古屋一の繁華街で道に迷っていた真っ白の毛並み、オッドアイの神秘的なまなざしとくれば、
そりゃあ猫界の尾張のご当主に違いないじゃないですか(←飼い主ばか炸裂、ご容赦ください)。
乳母やがどうしても書きたいお殿様ご自身のご幼名は、
「秀之助」さまでしたが(ご養子さまでしたので)、
「五郎太」さまのお名前はやはり特別だったのでしょうね、
尾張徳川の二十代ご当主さまは、この名をお持ちでした。
彼岸へ行かれた頃には、真っ白の雪が降っておりましたが、
今頃はきっと極楽であたたかくおすごしでしょう。

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