てんしき杯・後感

昨年までは単なる客として見ていて、
今年はじめて審査員をつとめました。。。
去年までは、予選を見たことがなかったのですが、
改めて、予選のレベルの高さ、学生さんたちの創意工夫と熱意に
襟を正される思いでした。

昨年までは、上方のきっちりとした型をしっかり習熟してきた学生さんの方が、
どうしても上位に入りやすい傾向があったと記憶しているのですが、
どうも今年は様相が一変。
スピード感あふれる「イマドキ」な工夫を凝らした関東勢が「攻めてきた!」
とでも言いたいような(大学は関西でも、上方弁で演じてない方も多かったですね)。

上手な学生さんはいっぱいいらしたのですが、
それだけではもう予選を勝ち抜けない
強烈な「落語圧」みたいなものが充満していました。

予選のはじまる前、別ブロックの審査員の宮崎さまとお話していたとき、
「今年はついに本当に『平成の落語』が来るんじゃないかなあ」と
おっしゃっていたのですが、まさにそのとおりの展開になったと思います。

私の希望を言えば、関東関西を問わず、ぜひ、「じっくり噺を聞かせる」タイプに、
巻き返してきてほしいと思ってます。
道楽亭 栗鈴さん、銀杏亭 魚道さん、大阪亭空留さん……惜しかったのだ、本当に。

ただこれは、必ずしも笑いがとれるわけじゃないし、
短い尺でそういう噺をするのは、
かなり勇気がいるとは思いますけれども。。。

また、幼稚家 恋路さん、飯喰亭 鯖寿司さん、賽狸家 可不可さんあたりには、
「引き」で勝負できる可能性がありそう。
これも、押しまくるタイプにぐいぐいやられてしまうと、
勇気のいる少数派スタイルかも知れませんが、
「引き」のできる人、貴重で魅力的だと思います。

さらに、これはご本人に確かめていないので、
違ったらごめんなさいですが、
おそらくはご自身の新作で挑んできた大阪亭 打ん突さん。
この意欲は買い! でした。
惜しむらくは、その世界にディテールが足りなかったこと。
モノカキとして言わせていただければ(←えらそうに(^-^;)、
お店が何を扱うお店なのかとか、「聞き取れない」言葉は実はなんと言っているのか、
などがきちんとお話の要素に書き込まれていると、ずいぶんちがったのではないかと思いました。

(すみません、これは私の勉強不足でした。立川吉笑さん作だそうです。。
 えらそうなこと言ってすみません<(_ _)>。吉笑さんがこの噺どんなふうにやるのか、
 残念ながら聴いたことがないので、この意見は保留させていただきます)

で、ここからは、「女子の落語」について、私が感じたことを。

基本、日本の伝統芸能、寄席の演芸って、作品の作りそのものが、どうしても、
男子が演じることが自明の前提になっていることが多いと思うのです。
なので、しきたりや差別を乗り越えてその世界に入れても、
それだけではたぶん、やっていけない部分があるような気がします。

浪曲はもともと女性が多いし、
講談はすごい勢いで女性が芸色を塗り替えている感じもするのですが、
落語はたぶん、一番女子にはハードル高いように、見てる側からは感じます。

で、今の「女子の落語」、ざっくり、端的な言い方をすると
「ぴっかり☆派」と「こはる派」になるように思います
(このお二方で代表することに異論のある方もおいでかもしれませんが、
あくまで私見ですので、私が複数回拝聴したことのある落語家さんで、
代表させていただくことにします)。

女性が落語をやろうという場合、たぶん、
自分がこのどちら側からスタートするかは、どうしても考えざるを得ない気がします。

「こはる派」は、性差を感じさせないスタイル。
これは、声の質や雰囲気に恵まれないと難しいように思います。
こはるさんのべらんめぇの魅力、小柄なのに、声量も低音も十二分な風情は、ジェンダレス。
希有な存在です。単純な男の真似では決してないけれど、
女を感じさせないパワーがある、とでも言えば良いでしょうか。

今回のてんしき杯の決勝進出者だと、糖蜜庵ちまきさんや、鵜飼家とまとさんは、
それから、予選で聴いた藤乃家御座瑠さんも
こっちの路線かなぁという気がしました。
(御座瑠さんのネタが「軽石屁」だったのは、
 その意味では諸刃の剣かな。。。「意欲買い!」 と、
「女の子にこれをやられるとなぁ。。。」と。
 感想が真っ二つに割れてました)

ちまきさんの荒削りだけど大胆な所作、
とまとさんの可憐な容姿を裏切って客席に押し出ていく感じとか。

一方の「ぴっかり派」。
こちらは、女であることを落語の中に打ち出していくスタイルとでも言えばいいでしょうか。 
予選で、聖護院長谷代さんに注目したのは、「悋気の独楽」を、
嫉妬する女将さんをメインに出してきていたのが、面白かったからです。
いやらしくならない上品な色気がありました。

決勝では、霜月亭雪走さんが、さらに鮮明にこの線を打ち出してきたと感じました。
物書き的視点で言えば、もっと大胆に喜瀬川メインにしても面白かったのではないか、
と思わせてくれるような可能性が。
マクラでメールの話をしてましたが、さらにもっとあざとく「女」を打ち出して、
他の男子をどきどきさせて、圧倒しちゃえ! って応援してました。

この双方を、演目によって自在に操れる、あるいは、
どちらでもないスタイルで聴かせる、見せる、なんて人が現れれば、
それはとんでもなく素敵なことだなぁ、、などと。

……なんてことをつらつら考えさせてくれた、貴重な機会に、改めて感謝。
来年以降も、ますます盛会になることを、心から祈ります。
てんしきパンフ裏 てんしきパンフ表
スポンサーサイト
プロフィール

おくやまけふこ

Author:おくやまけふこ
愛知県生。小説家。
名古屋大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。
大学教員などを経て、2007年、第87回オール讀物新人賞受賞を機に作家デビュー(受賞作は『源平六花撰』に所収の「平家蟹異聞」)。
名古屋市在住。
家族は夫と猫二匹。

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR